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さんじゅうろうの覚え書き

不治の中二病を患っている中年男『さんじゅうろう』の他愛のない覚え書きです。10年後には立派な黒歴史になっているかもれしない。

【オススメ漫画】『友達100人できるかな』について語る

何回でも読み返してしまうくらい面白い漫画と出逢うことが出来るのは『漫画読み』としては幸せなことであります。今でも手塚治虫のSF短編集などはふと手にとって1ページめくるといつの間にか読みふけってしまう事もしばしばあったりします。

しかしコレも歳のせいか、近年、面白い漫画はそれなりにあれど、何年に渡って何度も何度も読み返してしまう様な作品も少なくなって来たような気がします(それでも10作品以上あるが…)

その中でも『これは是非オススメ』という漫画を1作品だけに絞って紹介したいと思います。

 


 

友達100人できるかな』(とよ田みのる著・講談社刊 全5巻)

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ストーリー概要

主人公の柏直行(かしわ なおゆき)は36歳の小学校教師。晩婚の妻は出産間近、妻が入院したと言う知らせを聞きつけ、容体を案じ学校を抜け出して駆けつける。

病室で妻の様子に安堵し、妻を寝かしつける直之、そしてそれを興味深く、繁々と見つめる謎の生命体。一見、ボーリングのピンのようにも見えるその謎の生命体の正体は異星からの侵略者、いわゆる宇宙人だった。

宇宙人がテレビをつけると東京の上空に多数の円盤型の飛行物体が出現して大混乱になっていると伝える報道番組が流れている。

その宇宙人は直行に地球を侵攻してことを伝えると、ある条件を突きつけてきた。

その星の『他種族の存在する星を侵攻してはいけない』と言う規約がある。他種族と言っても一定の水準を満たしていなければ、種族と認められずに滅亡させてしまうが、水準を満たして相互間のコミュニケーションが出来うると判断された場合は、種族と認め友好関係を結び存続させると言う。

その為の試験体として直行が選ばれた事を伝えられる。

その試験とは『愛の存在を立証させること』

直行には『ある場所』に赴いてもらいそこで試験を受けることになる。

宇宙人に連れられ病院の屋上へ行くと、そこにも円盤型の飛行物体が浮遊してた。円盤から発せられるまばゆい光に意識が遠のく直行。彼が意識を再び取り戻すと、彼の姿と眼前に拡がる風景は一変していた。

彼は小学生の姿になっており、彼の周りの光景は彼の当時過ごした1980年のものになっていた。

人間の少女の姿をした宇宙人の観測者『道明寺さくら』と共に彼はこの場所で人類の愛を立証させるために『100人の友達を作らなければならない』。

彼の右腕にはそれを計測するカウンターが装着されている。

36歳既婚、身重の妻を抱えた小学校教師の人類の存亡をかけた『友達探し』の幕が切って落とされた。

果たして『友達100人できるかな

 

感想などいろいろ(チョットだけネタバレあり)

主人公直行について

彼の試験場所に選ばれた1980年東京の下町はパラレルワールドで、この世界での行動が後の直行に影響するものでは無い。とはいえ、彼を取り巻く環境は小学3年生の当時のままである。小学校時代の主人公の直行は決して目立つ存在では無くクラスではおとなしい部類のグループの中の1人だった、決して友達を100人作れるような子供ではなく、至って平凡な普通の小学生。しかし、リピーターとしたやってきた直行はいわゆる、『頭脳は大人、体は子供』と言うどこかの小学生探偵と同じ状況である。

小学校教師での直行は真面目であったが少々融通の効かない所があり、大人の理屈の中で少しずつ子供の心を忘れて行った感があり、物語の最初の方ではその言動や行動にも戸惑いを隠せないといった部分が色々と見ることが出来る。

そこで老若男女+αの対象と友達になっていくのだが、その過程は様々で、それらが直行の心のなかにあった忘れかけていたモノたちを思い出させていくのが作中から伺える。

物語後半は全5巻ということもあり、少々急ぎ足ではあったが、最後の1人の件では思わず目頭が熱くなってしまった。

 

道明寺さくらと宇宙人たち

被験者リピーターに対して必ず帯同する観測者、道明寺さくらもその観測者である。

この宇宙人たちは愛に対して深い理解を持っているが、その発達した精神からいささか効率的でクールな部分がある。さくらも直行の友情表現にたいして不器用さを感じながらもいつしかその不器用な行動に惹かれるモノを感じるようになる。

作中でさくらは観測者としての規約違反を冒してしまい、宇宙人らから裁判を受ける事になるのだが、直行の説得によって不問になる。当初、不器用な行動だと思っていた直行の感情表現に思わず心が揺り動かされ、今までとらえどころの無い性格だったさくらが一粒だけ人知れず涙を流すシーンには心動かされる物がある。

 

宇宙人達も愛を常に尊重してるので、とても友好的な振る舞いを見せるのだが、地球人を笑顔で野蛮人とか未開人とか何処か見下している部分があったり、先のさくらの裁判に対しての処分は『無に還す』で、「死刑などでは無く最初から存在しなかった世界を再構築する」と言う、効率的ではあるが意外と残酷な処分だったりする。

しかし愛を尊び、愛を重んじるスタイルに偽りは無く、『ああ、きれいな世界ってこんな感じなんだろうなぁ…』と思わせる部分があったりする。(私には無理な世界だなぁ…)

 

 

作中に登場する様々な懐かしグッズ

世代が近いからなのか、作中や巻末、カバーなどに描かれた懐かしグッズの数々は作者のとよ田先生が実にしっかり取材をしてるなぁ…と感じる部分が多々ある。そのチョイスが絶妙なのである、子供の頃に憧れた『いろんな機能がついたスポーツ自転車』とか駄菓子屋の光景とか、くじで当たる蜘蛛の人形などや、スーパーカー消しゴムにそれを弾くためのBOXYのボールペン(三菱)それらが作中の至る所に登場する。秘密基地のをクラスの男子達と作った時に持ち寄った宝物の中にエロ本と称して平凡パンチが入っているのも印象的。

【参考動画】


1978~1982 スーパーカー自転車CM集

 

リアルな子供の表現力

この作品で一番好きなところは『子供の表現部分』です。とにかくリアルで、その人物描写は『ちびまるこちゃん』を超えると思います。

クラスの中の派閥、そして男女間の対立、自分の少年時代に『ああ、あったあった、こんな感じ、こんな感じ』と思える部分が沢山あった。

とかく小学生はグループを作りたがりで、自分が例えば『3組』ならば、『4組には負けたくない』とか言う『組意識』。

組の中でも男子と女子は常にいがみ合ってる感じで、女子の目立つグループの中心人物を『そーよそーよ』と取り囲む他の女子たち。

ああ、あの頃って本当に同調圧力みたいなものが如実に表れていたなぁ…と、しみじみ感じる。

男子と女子との売り言葉に買い言葉の言い合いもとてもリアルで、コレばかりは作者の取材力以上の実体験が練り込まれた部分だな…と感じる。

 

あとクラス中に敬遠されるような乱暴者も必ず1人はいたなぁ…と、当時そんな奴とは絶対に目を合わせないようにしていた頃を思い出す。

その中でも私が強く仲間意識を感じてしまったキャラに『川辺』(カワベー)と言う少年がいるのだが、人気者グループにくっついている存在で、気が弱いのにお調子者で時々やらかしてしまって女子のグループにいじめられると言う少年だ。

ああ、俺……このタイプだわ…。と、他人とは思えないカワベーを見ながら、心がチクッと傷んだ。(ちなみに先に書いた宝物の中に平凡パンチを入れたのもこのカワベーである)

そんな自分と似た子供を見つけて見るのも楽しいかもしれない。

 

 

友達100人できるかな(1) (アフタヌーンKC)

友達100人できるかな(1) (アフタヌーンKC)

 

これと合わせてこの本もオススメである。

 

昭和40年男 2016年10月号

昭和40年男 2016年10月号

 

 

 まとめ

 目についたらつい1巻から読んでしまうこの作品。全5巻を言うこともあって、大変読みやすいのもあるのだが、私もすっかり中年になってしまい、普段は『ピーターパンの心を持ったく中年』とか『永遠の14歳』とか、いろいろと嘯(うそぶ)いているのだが、この漫画を読むと「ああ、俺もこどもの心をかなり失って薄汚れてしまったなぁ」と感じる。

だからと言って子供の頃に戻りたいなぁ……とかはあまり考えたことは無い。

大人だって楽しいことは沢山あるし、子供の頃は結構、制約も多くて息苦しい思いもしてきたからだ。

だけど、子供の頃に感じていた色々な想いは失くしてしまってはいけないと思うし、仮に忘れてしまったならこんな漫画を通じて思い出せればなぁ…と思ったりする。

この作品はただ自分がその時代の直撃世代だったから良かったわけでは無い。

今の若い世代の人達にもいつか訪れるであろう「遠い過去を振り返る」そんな時の為にも一度は手にとって欲しい作品だと感じたのだ。

これは「やり直す物語」ではなく「思い出す物語」だと思います。

 

あとこの作品はカバーを取ったらいろいろな仕掛けが施されているのだが、最終巻である5巻については全て読み終わった後にカバーをとって見て欲しい。

きっと穏やかな気分になれると思いますよ。

 

あとがき

今回は一冊に絞ってオススメをしてみましたが、興味を持たれた方は是非手に取って、それぞれの想いでご覧になって欲しいので、大きなネタバレには気を使いながら書いてみました。

今後もこのような形でオススメの漫画を紹介していきたいと思います。

まだ何冊かオススメしたい漫画がありまして……。

ちなみに最初にとよ田みのる先生の作品を読んだのは「FLIP-FLAP」と言うピンボールを題材にした漫画でコチラも物凄くオススメです。読後に思わずピンボールがしたくなって近所を彷徨ったのですが、なかなか無くて最後にはiPhoneのアプリでピンボールをしてたくらいです。

いずれの漫画も読後に爽やかで穏やかな気持ちにさせてくれる良作だと思いますよ。

 

【2016年10月9日追記】

現在Kindle版製作中のとよ田みのる先生の製作日記がありましたので、リンク貼っておきます。すごい作業量ですね。

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